ルピナス文庫 

「すばらしいとき」「センス・オブ・ワンダー」「THE IMPORTANT BOOK」(「たいせつなこと」)

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今日は、2010年4月の特集で昨日写真を載せた本の中でも、
センス・オブ・ワンダーセンス・オブ・ワンダー
(1996/07)
レイチェル・L. カーソン

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の隣に置いて ともに味わいたいと思える素晴らしい2冊を ご紹介してみたいと思います。

まずは 
すばらしいとき (世界傑作絵本シリーズ・アメリカの絵本)すばらしいとき (世界傑作絵本シリーズ・アメリカの絵本)
(2006/03/01)
ロバート・マックロスキーわたなべ しげお

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(表紙はページトップの写真でご確認ください♪)

この本は原題を Time of Wonder といいます。
その原題からも伺えるように、『センス・オブ・ワンダー』の前身である記事で、ウーマンズ・ホーム・コンパニオンという雑誌に掲載されたレイチェル・カーソンの「Help Your Child to Wonder」という記事に影響を受けて作られたそうです。
(→参考にした書評はこちら
きっと そうに違いない、そうなのだろう と思える絵本です。
実際 『すばらしいとき』の舞台はメイン州の入江で、『センス・オブ・ワンダー』の中でレイチェル・カーソンとロジャーが過ごし、探検をしているのも 同じメイン州だそうです。
出版社からの内容紹介として、
島でのひと夏の生活を、詩情豊かにうたいあげた絵本。
ひとたび本を開けば、早春から夏の終わりの季節のうつりかわり、雨のにおい、風の音や、輝くような日の光を、
まるでその場にいるかのような実感をもって、感じることができます。マックロスキーの自然への愛情と、
娘たちの成長を見守る父親のあたたかなまなざしが、のびやかな水彩画と詩情あふれる言葉で見事に表現されています。
あわただしく生活している子どもたちに、豊かに流れる時間を取り戻してくれる貴重な1冊となりますように。

とありますが、
私自身は この本に本当に深い感動を覚えるのは、思春期以降の子供・大人達なのだと思っています。
私は この本に出会ってから 年に数回、ゆっくりとページをめくるのですが、
年々、胸の内の感動が深く、強くなります。
実際の経験と この本とが 互いに呼応しながら感動を深めていってくれるようです。
初夏の海辺で、夏の海辺で、
海を離れ自宅でテレビを見ている時ですら、
ふっと この本を思い出す時があるのです。
逆に この本を眺めながら その年の思い出、旅先の景色を思い出すことも。

言葉と絵とで、隅々にまで描かれたマックロスキーの
センス・オブ・ワンダー
タイム・オブ・ワンダー
大地への、生命への、子供たちへの愛。

同じマックロスキーの
海べのあさ (大型絵本)海べのあさ (大型絵本)
(1978/07)
ロバート マックロスキー

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かもさんおとおり (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)かもさんおとおり (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)
(1965/05/01)
ロバート・マックロスキー

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サリーのこけももつみ (大型絵本)サリーのこけももつみ (大型絵本)
(1986/05)
ロバート・マックロスキー

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を読んでいるときにも、同じような愛を感じます。
『サリーとコケモモつみ』『かもさんおとおり』
などは4才くらいからの子供達に是非、と思う作品なのですが、
二色刷りだからでしょうか…なかなか、手に取ってもらえず、残念です。
(アニメ・テレビに慣れた現代の子供たちは穏やかな色合い、穏やかなストーリーに見向きもしないことがあります。でも、ほんのちょっとの手助けで子供達はあっという間に全く違った面白さ、楽しみ、喜びに気付き、自ら動くようになっていきます。派手な娯楽、情報が、子供達のセンス・オブ・ワンダーを奪っていること、考えた方がよさそうですね…。)
私は『サリーのこけももつみ』を大人になってから読みましたが
読むたびに 中学1年の夏、大雪山の上でコケモモをつまみながら歩いたことを思い出します。
そして、この本に出会ってから登っていたら、
もっと もっと もっと
楽しかっただろうなぁ…と、思うのです。

マックロスキーのセンス・オブ・ワンダー、愛情は
やわらかな子供達の感性にこそ、まっすぐに届くはずです。
子供たちが選んだ本を尊重してほしい、というルピナス文庫の願いと相反するようではありますが、
お母様セレクトで持ち帰ってでも、是非味わってほしい…
そう願っている本達でもあります…。

どうぞお手にとって ご覧になってみてください。

そして もう一冊が こちら。
The Important BookThe Important Book
(1990/03/10)
Margaret Wise Brown

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私は日本語版よりも原書の方が words と pictures に込められた深い想い、メッセージがしっかりと伝わるように思います。
マーガレット・ワイズ・ブラウンとレナード・ワイスガードからの
センス・オブ・ワンダーと子どもたちへの愛がたっぷりつまった
贈り物のような一冊です。
たいせつなのは 知識や情報よりも 心に感じること
そう、両者の美しい言葉と絵とがうたっているようです。
コオロギ グラス スプーン
ひなぎく 雨 くさ 雪 りんご……
マーガレット・ワイズ・ブラウンが どのようなセンス・オブ・ワンダーで それらを見つめているのか
どれほど美しく 簡潔な言葉で うたっているのか
そして その言葉を
レナード・ワイスガードが どれほど美しく 詩的に描いているのか……

私はこの本の マーガレット・ワイズ・ブラウンの words と レナード・ワイスガードの絵を眺めるたびに
二人に 私が生きていることを喜び、抱きしめてもらっているように感じます。
当たり前のように感じていた世界が より身近に、美しく迫ってくるように 感じます。

是非、ご覧になってみてください。(単語、文法共に中学校レベルです)

子ども達だけでなく 大人をも
レイチェル・カーソンが言うところの
生きていることへの新たなよろこびへと通ずる小道
へと 誘ってくれる絵本達です…。


センス・オブ・ワンダーの塊で生まれてくる子ども達と
より豊かな時間を過ごしていけますように…。



THE IMPORTANT BOOK の 日本語版に関する問題点が気になる方は
こちらも どうぞ……長いです・苦笑

さて、実はこの本を手に取る前に、
またまた『子どもと本』ですが(しかも またまた何号か不明なのですが・汗)この本の日本語訳に関する問題点と、裏表紙のすり替えの問題を指摘した文章を読んでいました。
ただ、その時は書店か図書館かでサラリと読み流してしまっていたのです。たしか そのページには本の表紙も載っていなかったように思いますし、本の題名も、私の記憶にとどまりませんでした。
その後、書店で日本語版に出会い、表紙の絵と、
マーガレット・ワイズ・ブラウンさく
レナード・ワイスガードえ
の文字にとても魅かれて、パラパラとめくっただけで持ち帰りました。
私は家でゆっくり読みましたが
何度読んでも、何度読んでも、気になる違和感を覚えたのです。

なんだろう なんだろう……

私は『子どもと本』で何か指摘されていたのは この本だ! と気付きました。
『子どもと本』で確かめるより、自分で確認をしようと、図書館で原書を借りました。
読み終えた後 ほとんど同じ内容のはずなのに、
読後感が全く違う事に 本当に驚きました。
心の中に広がってくるものが 全然違うのです…。
美しい うた 詩 でした。
いそいで表紙を確認すると、やはり
by Margaret Wise Brown ではなく
Words by Margaret Wise Brown  でした。
つまり これが 詩 だということです。

私はこの原書を購入したくなってインターネットショップのAMAZONを開き、探しました。
そこで沢山のレビューの中のいくつかの内容に、愕然としたのです。
以下斜線部は、そのうちのひとつです。

本当に大切なことは・・・りんごはまるいということ。ひなぎくはしろくあること。くさはみどりということ。。。
風に吹かれて地面に落ちて欠けたり、虫が食べて穴があいたものは、もう「林檎」ではないのでしょうか。少し枯れかけて、白ではなくなったひなぎくは、もう「ひなぎく」とは呼べないのでしょうか。草も同じです。
「こうでなければいけない」と、決め付けられているようで、読んでいて、とても苦しかったです。
「たいせつなのは あなたが あなたでいること」と言いながらも、です。
更に、本文は2つに分かれていますが、ひとしきりそのものの特徴を言ったあと、「でも」という否定の言葉がいちいち付くのも、腑に落ちませんでした。
あの、マーガレット・ワイズ・ブラウンですが、何を言わんとしていたのか。
訳者が違ったら、どう表現していたのか。気になります。
原書を読んでみたいです。
前評判が良かっただけに、苦しみの中で読み終えた感は、ぬぐえません。
何かしらに挑戦しようと思っている人、これから伸びようとしている人、今頑張っている人にとっては、酷な本だと感じました。


そんなこと、英語からは、原書からは、全く感じられないのに……と、残念でした。
何故、そんな誤解が生じるのか、日本語版と原書とを読み比べ、あれこれと調べてみました。
ここでは grass  のページを例に、原書と日本語版とを比較してみたいと思います。

The important thing

about grass is that it is green.

It grows, and is tender,

with a sweet grassy smell.

But the important thing about grass

is that it is green.


くさは みどり
くさは おおきく のびて
あまく あおい においで
やさしく つつみこんでくれる
でも くさに とって
たいせつなのは
かがやく みどり で あること



まず気になるのは、出だしの
The important thing about grass is that it is green.
が、
くさは みどり
と 言い切りになってしまっていること。
これが誤解を与える第一要因だと思います。
次に問題なのが、 同じ繰り返しの終わりの一文、英語では全く同じその一文が
でも くさに とって たいせつなのは かがやく みどり で あること
と訳されていること…。
about が、「~にとって」で訳されているのです。
これが第二要因。

「こうでなければ いけない」という誤解が生じる原因は この二つにあります。
このような誤解を受けるのも、
 くさに とって たいせつなのは (かがやく) みどり で あること
という日本語版の文を、原文を離れ、この日本語を素直に英語に置き換えるとわかりやすくなります。
この日本語、以下の二通りに英訳されます。

1:The important thing for grass is that it is green.
2:The important thing to grass is that it is green.

どちらも、もう一度日本語にすると
「くさに とって たいせつなのは  みどり で あること」
です。
これをさらに、http://www.english-test.net/forum/ftopic21468.html http://www.ldoceonline.com/dictionary/important を参考に1と2を捉えなおすと、

1は、草は緑であることが大切、つまり、草は緑じゃないといけない…くらいの意味
2は、草が大切にしているのは緑であること、つまり、草は緑であることを大事にしている…くらいの意味

つまり誤解のほとんどが、1の 「for」 でとらえていることになります。
しかも第一要因で挙げたように、
くさは みどり
と言いきってしまっているので、ますます、その誤解を強めます。

さて、では 原文は というと
for でも、to でもなく、 about なのです。
中学で習う単語ほど、奥か深かったりするのですが、この about 辞書で引くと「~のまわりに」「~の身辺に」「~については」等々とありますが、細かく言うと「~に関係がある諸々の事柄については」という意味があります。
「~」をアバウトな感覚でとらえている感じ とでも申しましょうか…。
まさに近年「大体」とか「正確でない」の意でよく使われる「アバウトだねー」の感覚がピンとくるかと思います。

なので、原文の
The important thing about grass is that it is green. は、 
「草に関連する、まつわる諸々の事柄の中で、大切なのは草が緑であることだ」
ということような意味になります。

about grass =草に関連する諸々のこと
      =it is green
       it grows
      it is tender, with a sweet grassy smell

ということです。

では、それでは一体 「誰にとって 何にとって」大切なのか…という事になりますが、
ここで思い出したいのが、これはマーガレット・ワイズ・ブラウンの words 詩 だということです。
つまり 実際に書いてなくても、

I wonder

の想いが全ての文にこもっているのです。

I wonder,the important thing about grass is that it is green.
私は 草が緑色をしていることに 一番心が動くの…とでもいう感じ。

くさに とって たいせつなのは
ではなく、
マーガレット・ワイズ・ブラウンに とって たいせつなのは
なのです。


本当は全てのページで 同じフレーズを繰り返して
「わたしには 世界がこんな風に みえるのよ…」
そんなふうに、マーガレット・ワイズ・ブラウンが彼女のセンス・オブ・ワンダーで捉えた様々な世界を 美しく、簡潔に うたっているのですが、日本語版では このことが 伝わりにくい。
彼女の想いそのままに、同じ言葉を、原書のように 簡潔で 美しく、リズムのある言葉、日本語で うたい直すことができるのかどうか…。
私には、無茶だったのではないか、とすら思えてしまうのです。
相当、生意気なことを言っている、書いていると自分でも思いますが
それでも、日本語版で私が一番最初に感じた違和感、原書での感動、そして あらぬ誤解、評価が存在することを思うと、残念で残念で ならないのです。

そして、翻訳の問題とは別に 私が気になるのが裏表紙のすり替えです。


一番最後の詩

you are you

これはもう、

あなたの性質、性格、諸々ではなく
あなた そのものが 美しい
あなた そのものを 愛している

とうたっているようなページなのですが、
そのページを読み終えて そっと本を閉じた時に
「あなた」=「こどもたち」の 瞳が映るように、ワイスガードは描いています。
まるで、

あなたには せかいは どのように美しく うつるのかしら…

そう、ささやかれているかのようです。
どこかに そうと書いてあったわけではありませんが
私はそう感じたのです。
私を、私が愛する世界ごと 抱きしめてもらったように 愛されているように 感じたのです。 

一体全体、何故 裏表紙を変えてしまったのか…。
ワイスガードは必要のない絵を適当に描いて載せるような大人ではないはずです。
一体、どれ程の想い、情熱、愛、意味を込めて変更したのでしょう。

ね? フレーベルさん?

こういう事、翻訳本に多々あるので悲しくなります。


子供達は、適当な大人ではなくて
もっと真剣で、熱く、誠意に満ちた大人に出会いたいのです。
常にそうあることは難しくても、そうあろうとする姿勢、大切にしていきたいと思います。

実は これらの事を調べるのに随分と海外のページに飛んだのですが、どうやら海外では このシンプルな詩の形をそのままに、子供達、生徒達に自分の世界をうたわせる授業、試みが あちこちでなされているようです。

The important thing about _________ is that it is _________. It ______________, and it _________________, and ___________, and it ____________________, and _____________________.But the important thing about _____________ is that it is ________.

その中で こどもたちが言葉も絵も描いた作品を写真で載せているページがありました。
こどもたちのセンス・オブ・ワンダーがつまっているようで 素敵です。

http://www.gmbservices.ca/Jr/ImportantBook.htm

ご参考までに…。


長文、失礼しました♪

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コメントコメント


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mixiの自宅に図書館を!コミュからやってきました。
3歳の息子を持つ、絵本好きなママです。

『たいせつなこと』は、なんとなく訳がしっくりこなくて
悶々としていたのですが、やっぱり原書は詩のような感じなのですね。
こちらのブログを読んで、原書を読んでみたくなりました。

『おやすいなさいおつきさま』も、日本語訳のを読んでから、原書を読んでみたくて読んだのですが
詩のような感じでとてもよかったです。

やっぱりマーガレットワイズブラウンの絵本は原書がいいのですね。
私も手にとってみたくなりました。

そうそう、原書と日本の翻訳書とでは、ちょっと中身が違いますよね。
挿絵がなくなっていたり、そこも含めて作者の伝えたいことだったのに
どうしてぬいちゃったのかな??というものがありますよね。

私は英語は最近さっぱりですが、中学レベルぐらいなら、なんとかちょっと読める感じです(お恥ずかしい)。
なので、『The important book』の中身を確認してみたいです。

『ぼくにげちゃうよ』なんかはどんな風に訳されていますか??
やっぱり原書にあたるのが一番よさそうですね。

石井桃子さんが訳したものなどは大好きなのですが。

MAYU | URL | 2010/04/06 (Tue) 12:14 [編集]


MAYUさま
はじめまして。
ブログ、まだ少しですが拝見させていただきました。
凄いですね!
司書の資格取得、応援しています!

時々、翻訳がしっくりこない時に原書にあたってみるのですが、翻訳って本当に難しいですよね…。
特に幼い子向けの本や詩ほど難しいように思います。
だからこそ、時折翻訳の素晴らしさに感動することもあります。先日も「すばらしいとき」を原書と読み比べていて渡辺茂男さんの言葉の美しさに感動しました…。私も石井桃子さんの言葉、大好きです。
『おやすみなさいおつきさま』も『ぼくにげちゃうよ』も日本語訳にさほどの違和感は感じなかったのですがペーパーバックで原書持ってます。やはり響きが美しいですね…。といっても、私発音は全くなのですが…笑
読むのも絵本レベルなら大丈夫ですが、児童書だと辞書を片手に…です。タドキストの方々曰く 辞書を絶対に使わない、のが もっと読める、わかるようになるコツらしいのですが ついつい辞書に手が伸びます・笑
子育てしながらの単位取得、大変なことと思いますが応援しております!

ルピナス文庫 | URL | 2010/04/07 (Wed) 08:13 [編集]


 
 

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